内側の骨格

 さて今日から12月、師走ということでお休みの日でもチトドタバタ、そして昨日は新聞の勧誘かなんか知りませんが、60代の女性が家に来て、失礼ながらも私が始終している首輪に手を伸ばそうとしたことに大激怒。(決してここで「黙れ素人が!」とは言ってません。)そのままつるし上げてやろうかと思いましたが、そこは抑えての「紳士な」私。今日は日曜日、ミニカーのお話。1枠目の今週は「市販車」、今月はこんなお話です。
(これこれ、あんまし無茶したらいかんよ、ミーシャ。)

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 今月はこちら。フェラーリの代名詞「テスタロッサ」の改良型、「512TR」(1992年)です。TRとは「Testa Rossa」の略ですが、テスタロッサがパリでデビューした4年後の1988年に512TRの開発は本格的にスタートしました。本来、次期モデルの開発は現行のデビュー直後の場合が多いわけですが、それが遅れたのは、社内事情のせいでもありました。エンツォの死(1988年夏)や、それに伴う新体制への勢力争い(フィアットが推し進めた「夢工場計画」、フィアット・グループのイメージ・リーダー的存在にしようとしたわけです。)で社は大混乱だったんです。その混乱が納まったときフェラーリのスタッフ構成は、フィアットからやってきた面々が主流となっていました。コンピュータ支援設計を使いこなすそれらの新世代によって512TRの改良は行われれ、1991年秋に発表されることになります。

 この車の元になったテスタロッサは以前にも書きましたが、とんでもない欠点を抱えた車でした。威風堂々たる体躯(長さはトヨタ・カローラクラスですが、幅はメルセデス・ベンツのSクラスばりに1m96cmあります。)と裏腹に、とても危うい走りをするじゃじゃ馬でした。原因はまずそのエンジンとギヤボックスの置き方にありました。テスタロッサのエンジンはギヤボックスを真上に抱いて、後輪にのしかかるように高く置かれています。(つまり一番重いギヤボックスとエンジンが重なって、やや重心が上がるわけです。)あるときテスタロッサのエンジンをデフとギヤボックス込みで測ったら、なんと440kgもありました。これは昔のフィアット・チンクエチェント1台分に匹敵する重さ。それがまったくもってシャレにならない場所に鎮座していたんです。

 512BBから引き継いでしまったのは、高重心&リヤヘビーという重量配分面での二重苦だけではありませんでした。テスタロッサは、べろんべろんに捩れるヤワいボディというBBの今ひとつの大弱点もまた受け継いでしまっていました。この時代のフェラーリは、鉄パイプを組んだフレーム式の古式ゆかしい車体構造(モノコック・ボディの登場はもっと後です。)で、床の部分はまあまあ丈夫だが、上屋の部分は「アウターパネルを固定するのが主な仕事ですから」と言わんばかりのセコい作り。しかもテスタロッサの場合、エンジンルームには巨大なエンジンがのさばるから、そこに鉄パイプを上手く配すことができず、リヤセクションがとりわけ脆弱になってしまいました。ということから、一番重いところが一番弱いという、「ありえね~」車体だったんです。そのヘタレさは、わざわざ走らせなくても後ろを追走するだけでわかります。路面の不整にあったりコーナリングするたびに、リヤ部分がグシャグシャと変形するのが目で見てバレてしまうほどでした。

 という欠点を抱え込んだテスタロッサの後継を考える際に、さすがにこれではマズイと思ったフェラーリはあちこちに手を入れてきました。なにせ当時のフェラーリにはレースに出ようと本気で作ったF40という化け物がいました。いかにあちらが限定スペシャルとはいえ、12気筒様がV8ごときに簡単に負けては…。そこで多少なりともマシな走りをするように改良が施されました。(ただし、F40は3000ccV8ツイン・ターボ、ターボは2倍換算となるために計算上は512TRよりも排気量は大きくなりますが。)まず諸悪の根源であるエンジン/ギヤボックス。これは、いまさら基本設計を変更できないから形式はそのままですが、マウント・ブラケットを工夫して頑張って搭載位置を3cm下げました。たった3cmと言いますが、相手は440kgの塊、1mmでも低いほうがいいに決まっています。そして、かねてより課題の車体にも手が入れられました。テスタロッサでは、エンジンを受ける部分のフレームの床の部分は、本体にネジ留めでした。そこでリヤ床部のフレームはネジ留めでなく、溶接の一体構造に変えられました。タワーバーの例を出すまでもなく、ネジ留めと一体溶接では天と地ほども剛性は違います。加えてフェラーリは、古式ゆかしいパイプ・フレーム構造そのものにも改良を加えました。キャビンの床の部分、そして前の荷室との隔壁とエンジンルームとの隔壁に鉄板を張り込みました。それまでは、床はアルミ板のリベットで留めで蓋してあるだけだったし、前後の隔壁には何も構造物はないため、そこに鉄板を張って溶接して、フレームの補強としたわけです。
 
 こうして512TRの車体剛性は当然大きく上がりました。言うまでもなく剛性アップは走りに効いてきます。なにせ元がグニャグニャだったから、その違いは大きいわけで、テスタロッサでは思わずチビってしまうコーナーでも、512TRは冷や汗をかく程度で済むようになったんです。(ただし、冷や汗をかくとはいえ、安全運転を心がけましょう。)そんなこんなで、俄然きちんと走るようになった512TR。その原因をこの時から採用された18インチのハイグリップ・タイヤのおかげだという方もいます。(テスタロッサは16インチでした。)しかし考えれば分かるとおり、駄目なシャシーにハイグリップを履けば、走りは余計に崩壊します。(決して市販車にドラッグ・スリックなんて履かせてはいけません。)この車の最大の改良点は、凛々しく艶やかなその身体の、内側の骨格だったとも言えます。

 ミニカーはサンクスのフェラーリ(4)(2007年)より、そして皆さんお待ちかねの諸元はこちら。

車名          512TR

デビュー        1992年
製造          1992年~94年
全長          4480mm
全高          1135mm
全幅          1975mm
ホイール・ベース    2550mm
トレッド(前)     1530mm
    (後)     1645mm
車重          1650kg

エンジン        フェラーリ ティーポF113D
形式          水冷レシプロ 水平対向12気筒 DOHC4バルブ
総排気量        4942cc
ボア×ストローク    Φ82×78.0(mm)
Vバンク角       180度
最大出力        425馬力/6,750rpm
最大トルク       50.0kg-m/5,500rpm
圧縮比         10.0
燃料噴射システム    ボッシュ社製 モトロニック M2.7 電子制御
点火システム      マニュエッティ・マレッリ社製 電子制御

駆動方式        後輪駆動方式(MR)
変速機         前進5速 マニュアル縦置き(+後退1速)
差動システム      リミテッド・スリップ・デファレンシャル

シャシー        鋼管スペース・フレーム
サスペンション(前)  独立懸架 ダブル・ウィッシュボーン式 
       (後)  独立懸架 ダブル・ウィッシュボーン式
ブレーキ   (前)  ベンチレーテッド・ディスク
       (後)  ベンチレーテッド・ディスク
ステアリング      ラック・アンド・ピニオン
タイヤ+ホイール(前) 8.0J×18+235/40ZR18
        (後) 10.5J×18+295/35ZR18
燃料タンク容量     100リットル

ボディ・スタイル    2ドア・ベルリネッタ
乗車定員        2名

 ということで長くなりましたが今日のお話はここまで。今日も一日、「喝!」を入れときましょということでお後もよろしいようで…。
(ほいでほいで、今日は誰なんやろね、ミーシャ?)
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